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Great Big Seaに関する雑談、その他音楽、あるいはただの読書日記

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//中村融、山岸真 編//河出文庫ン2-2

総勢14人によるSF短編アンソロジー。作品リストを以下に。
 「初めの終わり」 レイ・ブラッドベリ
 「ひる」 ロバート・シェクリイ
 「父さんもどき」 フィリップ・K・ディック
 「終わりの日」 リチャード・マシスン
 「なんでも箱」 ゼナ・ヘンダースン
 「隣人」 クリフォード・D・シマック
 「幻影の街」 フレデリック・ポール
 「真夜中の祭壇」 C・M・コーンブルース
 「証言」 エリック・フランク・ラッセル
 「消失トリック」 アルフレッド・べスター
 「芸術作品」 ジェイムズ・ブリッシュ
 「燃える脳」 コードウェイナー・スミス
 「たとえ世界を失っても」 セオドア・スタージョン
 「サム・ホール」 ポール・アンダーソン

明確に覚えている作品と、うすぼんやり覚えている作品とにくっきり分けられます。
好みの問題としか言いようがありませんけれど、気に入った作品をいくつか取り上げると
「ひる」「父さんもどき」「隣人」「真夜中の祭壇」
そして「証言」、「たとえ世界を失っても」。
ヒューマニスティックな作品が好きな方には上記いずれも自信をもってお薦めいたします。
「ひる」と「父さんもどき」はヒューマニスティックとは一線を画すかと存じますけれど、
ひりひりするような焦燥感をお楽しみいただけるのではないかしら。
前者は全体主義、後者は家父長制度(それから差別)への潜在的恐怖を描き出す。
「隣人」と「真夜中の祭壇」はどちらもオチが技巧的な、
前者はユートピア小説、後者はまるで写実主義小説。
のんびり読める造りになっています。
そして「証言」、「たとえ世界を失っても」。
感受性が悲鳴を上げました。
何度も読み返してしまった。言葉を一語一語追って、拾い上げて。
ラストを知っているのにいつも最後で胸がつまる。愛しくて美しくて堪らない。
先入観と視覚に頼りがち、という人間の弱さを上手く包んで広げてみせた。
個人的にいちばんだ、と思うのは「証言」。ほとんど同着で「たとえ世界を失っても」。
どちらもすとんと着地して、空洞なのに満ち足りた気持ちにしてくれます。
ラッセルの作品集はたぶん買います。

もちろん、以上に挙げなかった作品にも魅力は満ち満ちております。
たとえば「なんでも箱」はウェルズの「水晶の卵」を思わせるし、
「幻影の街」「消失トリック」「芸術作品」「サム・ホール」には
強くつよく全体主義への警告がくっきり浮かび上がる。
SFのすごいところはあらゆる方法で世界を作ってしまうこと。
そして現在をさえ変える力をもっていること。
未来を提示して、選ばせてくれる。
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好きな画家
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