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Great Big Seaに関する雑談、その他音楽、あるいはただの読書日記

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※ このレビューはロビン・フッドという映画それ自体よりも、
※ そこに登場するメリーメン(以下「一党」)を中心にしています。

まず初めに。
なぜひとつのメインとして一党を置くかというと、役を作りこむRussellが
3人、Alan、Kevin、Scottを自ら選んで一党の役にあてているからです。
そして選んだ理由をこう述べる。
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I also need all the Merry Men to have a musical background and Ridley is like ‘Why?’
(一党には音楽的な要素を持たせておきたかったのもある。
 リドリーは不思議に思っていたけれど。)
My thing was if you spend time in the army as these men do, if you are on this battlefield of brutality, then you have to know how to celebrate.
(従軍しているとき、残忍な戦場にいるとき、
 陽気にしているということを知るべきだと私は思っている。)
If you have made it through that day without an arrow through a part of your body dipped in horse urine - because it poisons your blood and you die - or cleaved in two by some knight in armour on horseback.
(一日を、矢や馬の排泄物を受けたり、馬に乗った騎士に切り裂かれることなく、
 つまり死ぬことなく過ごせたらわかる。)
If you get to the end of the day then you have to know how to celebrate and then get ready to do it again the next day.
(その日を生き抜けたら愉快に騒いで一日をリセットするべきだし、
 だからこそ翌日に備えることができる。)
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拙訳失礼しました。原文はこちらから拝借。
今でこそ気づきませんが
宗教がなんのためにあるのかというと、死を恐れるためです。
その死を招く戦争、生き延びたことを祝う音楽。
戦いを与える国と、音楽を与える一党。
ロビンを追放する王と、彼を迎える仲間。
イングランドvs.フランスが土台だとしたら、
当然、それに対応する一党が通奏低音であるということです。

さてその一党をまず軽くおさらいしておきましょう。(公式設定)
リトル・ジョン:力持ちの大男。スコットランド出身。
ウィル・スカーレット:赤毛で小柄な男。ウェールズ出身。
アラナデール(アラン・ア・デイル):長髪の男。アイルランド出身。
そしてイングランド出身のロビン。

この出身地の関係は、序盤でかなり有効に表れていると思います。
例えば、
・ウェールズを小ばかにするジョンと怒るウィル
・酒が飲める場所は、と尋ねるアランと窘めるジョン
・ロビンに付き従うウィルとアラン、一線を画するジョン
始まりのシーンで森からロビンが狩を終え、アランとウィルを連れて出てくる。
以降アランとウィルに対してロビンは指示を下すようなやり方が目立ちます。
(戦争中の「行くぞ!」、ノッティンガムでの「屋根から射ろ」など。)
比べてジョンに対しては同行を許す理由が「役に立つ」にも関わらず
彼に命じる場面はアランとウィルほど目立ちません。(実際なかったのでは。)
ウェールズとアイルランドはイングランドに従属的な立場を打破できなかった一方で
ずっと対抗し続け独立もしたスコットランドとの違いが
3人の違いとしてここに出ているように思えます。

その3人が、ロビンが1人でいるときは一緒に行動する。
お酒のみに行って女の子捕まえて、次の日は3人で眠る。
(そして水ぶっ掛けられて一斉に起きる。ここ最高だった!)
これはパンフレットに「連合王国としての意識」云々、とありましたが、
むしろイングランドに対しての「周辺」だという部分が見え隠れする気がします。
結局中心はイングランドであり、彼らは独歩しない、ということ。

そういえばRussell自身で音楽を要素に上げているのに
ロビンは Row me bully boys, をちょっと歌ったぐらいじゃないのかな。
キャンプファイヤで、ウォルターが「音楽、笑い声、焼けた肉」と述べていますが、
これは序盤のロビン一党のシーンと被ります。山分けしているところ。
アランがウィルに陰気な歌はやめろと言われてジョンのリクエストを採用する場面。
ウォルターにとって「戻ってきた」ものは、ロビンたちが常に持っていたもの。
それを遠巻きに眺める孤児。
彼らが欲しい場所は寒々と冷えた村ではなくてああいう村なのですね。
ロビンがジョン王に対して要求する、「家族を養える場所」。それを持つ男性。
そういう部分に家父長制を見ながら(時代ものだものしょうがない!)
マリアンが孤児を引き連れてくるところはフェミニズムとしては上出来でしょうか。
ここで冷める、という方もいらっしゃるようですが、
その前にあんなに男性主義的発言をしておいたら
これくらいの中和があってもおかしくないのでは。


ストーリー全体も映像も、文句なく楽しめた作品だったと思います。
vs.フランスの弓矢のシーン、あの臨場感素晴らしかった。
個人的にはフィリップから血のついた生牡蠣を渡され、
それを食べるゴドフリーもなんだか印象に残っています。
あれが「血の誓い」となにか関係するのか、2が出たらわかるのかしら。
イザベラが意外と気丈で、イングランド寄りだったのも好印象。
マーシャルのいかにも政治的な人物というのは妙な感じ。
誰に降伏したのだ、と訊ねる王に、「イングランドに」とでも言うのかと思いましたわ。
あれはわざとですね明らかに。
王以外のリーダーがいては困る、という、当たり前といえば当たり前な時代背景です。
だからこそ「神が私を王にした」と言うジョン王の拙さは同時に正しい。
王権神授説がなければ時代が成り立たない。
(ただしロビンは序盤に十字軍に否定的な態度を見せているのが布石。)


ロビンについて言えば
町の入り口で「ただのロビン」と言う。
これがKingdom Of Heavenの「ただの鍛冶屋です」を髣髴とさせた。
一番ぐっときたのは、マリアンを馬に乗せて、鐙をかけてあげる場面。
あれは本当、心を掴まれるシーンでした。
やさしさ、丁寧さ、みたいなものが足に添えられた両手に満ちている。
そしてバーンズデイルで手形を合わせるシーン、
成長してしまった自分の手の大きさが、父の手と同じになっている。
ここで確かにいた彼自身の父親像を掴み、自分が何者かを掴み、
けれどロビン・ロングストライドは存在していない。
なにしろ彼は今ロバート・ロクスリーなのです。
ゴドフリーがロバートは死んだ、と囁いた瞬間にロビンはロバートでなくなり、
重ねてロクスリーが亡くなる。父親からの解放です。
ノッティンガムを救ってそれを知り、やっとロビン・ロングストライドが誕生。
そしてゴドフリーに文字通り一矢報いる戦いの後。
森で鹿獲って孤児の子ども達と暮らすのですが、あれは明らかな父親像。
そして青い服(聖母の象徴)のマリアンがそこで微笑む。
女神に彼は背を向けないのですね。

マリアンについて言えば
Cateがエリザベスでやっぱり馬を駆って前線に立ったことを思い起こしました。
あの時も相手の王の名前はフィリップ(フェリペ)。スペイン王でしたね。
高貴な、背筋の通った役がほんとうに似合う。
さてさて、戦いの後で領内を治めているのは彼女なのでしょうか。
領民はロバート=ロビン、というのを承知なのかしら。
ここちょっと気になるなぁ。


最後に。
エンドロールのアニメーション。これを観ないで席を立つのは勿体無い。
そのあとのクレジットで、挿入歌のところにAlanの名前があるのをしっかり確認しました。
この4曲ともサントラに収録されていないのは実に残念です。
さて、それも終わると、じわっと浮き上がるRobin Hoodの文字。
そうなの。
The End、ではないのです。

パンフレットへの文句。
アルファベットをカタカナ表記するのが嫌いなのですが、
それは決して日本語の文字ではアルファベットを表記できないことにあります。
直っていませんでした。がっかりです。
McCannはマッキャンよりもマケァンの発音の方が近く、
音楽を担当したStreitenfeldはどう見てもドイツ系の名前なので
シュトライテンフェルト、と読むのが正しいのではないかと思います。
それからBob。ひどいタイプミスだ。ボルって誰。ボブでしょ。
更にグレート・ビッグ・シーって。まさかの表記だわ。グレイトでしょ。
アルバムは全部で10枚出ています。
Alanの情報が少ないのはわかりますが……ひどすぎる…………。
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好きな作家
:いしいしんじ、江國香織、梨木香歩、藤沢周平、福井晴敏、
Christian Gailly、Ray Bradbury、Edgar Allan Poe、Oscar Wilde
好きな画家
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